はじめての、創作発表会。舞台は森。
作品は〝ぼくと・わたしからのメリークリスマス!〟
創作発表会の場、かたのカンヴァスへようこそ
甲子園球場の6倍もの広大な敷地の中で四季折々の自然を誇る私市植物園、そこで企画された市民による手作りのクリスマスイベント〝かたのカンヴァス〟。今週末の12月23日・24日に開催されたそのイベントで、irononeのこどもたちの作品が展示されました。
作品をこんなに広い自然に囲まれた中で自由に展示させてもらえる機会はそうそうありません。創作発表会の場に、これほどの舞台がありましょうか!
メイン会場を少し離れるとメタセコイヤの並木があり、それはそれは圧倒されるほどの美しい森。
並木の入り口からいろんな作家の作品が並び、それを鑑賞しながらもう少し奥に。人気を避けてひっそりと佇むダンボールのオブジェ。
かわいくユニークでどこかおどけた表情のirononeの作品たち。
この2ヶ月弱、アトリエではこどもたちがこの発表会に向けて一生懸命取り組みました。
4歳や5歳にとっては、「持続して同じ作品を創る」ということは難しいものです。
早く違う作品を創りたくなる。次に新しいことがしたくなる。前回頑張って創った部分も今日はもう嫌になる。
教室では毎回手を変え品を変え、こどもたちの集中力が続くように、「これをもっとかっこよくしたい!」の気持ちが湧くように、「これをこうするにはこうしてみたらどうだろう。」と、好奇心がやる気の原動力になるように。
背中を押しながら(時にはお尻をたたきながら!?)じっくりとひとつの作品に時間をかけて作り上げること。向き合うこと。を、この発表会の目標にしました。
そして大きい小学3年生の2人には、お互いまったく違うそれぞれの個性。いつもは思い思い好きなようにしていますが、今回はあえてその自由さをぐっっと押さえて、共同制作にチャレンジしてもらいました。
凸凹な2人が顔を寄せ合い「あーだこーだ」「ぴーちくぱーちく」と作戦会議。それぞれの良さを生かして最後までちゃんとお互いを尊重しながら完成させました。
こどもたちを教えていてつくづく感じることは、こどもたちにとって作品というのは本当は「燃え殻」のようなものだなってこと。
こどもにとって大事なことは、それを創っている「今・そのときの」瞬間、創る過程だと言うことです。
出来た作品はあくまでも副産物で、結構適当に放り投げて、「あとは拾っといてー」と言わんばかり。
その燃え殻のような作品に価値を置くのはおとな達です。
だから、この発表会でも、「人に見せる」ことを目標にせず、「立派なものを完成させること」を目標にせず、こどもたちの気持ちが置いてきぼりにならないように
創る過程が、楽しくいつも通りであれば良い。その「普段通り」を大事にするように努めました。これがわたしの自分自身への目標です。
こどもたちは本当に本当に素敵な作品たちを完成させました。
その子ひとりひとりの姿が浮かぶ分身のような愛しい形になりました。
じっくり眺めてみると、つっこみどころ満載のユニークな姿!ユーモアのある顔!人にはよくわからない箇所を細かく細かく必死に作り込んでるパーツ!絵の具と絵の具を塗ったくって偶然重なった美しさ!
作者から手を離れた作品たちは、まだまだ〝燃え殻〟どころか、じわりじわりと、また熱を発し始めたかのようです。
そうして、はじめてこうして展示し、お父さん お母さん おじいちゃん おばあちゃん 知らない人。
みんなが自分の作品を愛おしそうに、大事そうに、眺めてくれる。その愛に満ちた時間と経験は、こどもたちにとってきっと達成感や自信につながるだろうと思います。
自分が一生懸命作り上げた作品というのは、単なる〝燃え殻〟だけではなく、そうやってまわりの人の心に届く〝力〟を持っているということを、少しだけ感じてくれたら良いと思います。
何より、作品を通してあたたかい時間を共有できたことを本当に嬉しく思います。
搬入は朝の8時過ぎで、まだ土には霜もしっとりと降り、川の氷も溶けない時刻。朝日だけが木々の隙間から光のカーテンのように注いでいました。
ひとつひとつ作品を置く度に、その子に魂が宿って、「やぁ 明日香」と声をかけてくれる。そんな錯覚におそわれました。
6体揃って立つ姿はまさに精霊さながら、生き生きとした存在感を発していました。
こどもたちは気づいているでしょうか。作品が自然の中で呼吸して「魂」を宿したことを。
自分に熱い息を吹きかけ、「やぁ」と語りかけてきていることを。
気にとめているでしょうか。
いやいや、きっと気づかない。まだ気づかない。
もう少し、もう少し、こころがおとなになった時、自分が生み出したものが魂を宿す奇跡に、はっとする時が来るでしょう。
その瞬間があるからこそ、本当に創作は楽しいのだということを。
保護者の皆様、かたのカンヴァスの実行委員会のみなさま、画材調達にご協力してくださった皆様
本当にありがとうございました。
この場を借りてお礼申し上げます。
絵と色 つくる教室
atelier ironone
沖 明日香